孤高の魚



「それだけの事をしてきたのよ、あたしも」


そう意外にアッサリとしている最近の尚子は、妙に逞しい。
その上、生き生きとしている。

母親になるという事は、男には分からない、何か神秘的な生命への刺激があるのかもしれない。
今までのどんな尚子よりも、今の尚子が一番美しいと僕には思える。


………


昼間の仕事を辞めた尚子は、持て余した時間と近所のケーキ屋のプリンを持って、毎日のように野中七海を訪ねて来た。

……尚子が野中七海に妙になついている。
何となくそんな感じだった。


時々は二人で買い物なんかに出掛けて、尚子が野中七海に服を選んであげたりしている様子だった。

それは男の僕から見れば、尚子の単なるお節介の様で。
現に野中七海は、自分のスタイルは決して崩さない。

尚子にいくら言われても、メイクなども殆どしなかった。



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