孤高の魚




僕は、歩太が言うように、いつも気持ちがニュートラルにあるような、そんな強く冷静な男では、やはり決してない。

……臆病者なのだ。

ただの臆病者。
その上プライドが高いのだから、始末が悪い。



………


「……アユニ、どこか悪い?
それとも何か、辛いことがあった……?」


野中七海が引っ越して来てから、2ヶ月が経とうとしている11月のある日。
冷えたキッチンでは、ついこの間出したばかりのファンヒーターが、早速稼働し始めていた。

寒がりの野中七海は厚手のカーディガンを羽織り、両手で精一杯カップを包みながら、座ったまま上目遣いで僕を見てそう言った。



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