孤高の魚
「……それより、君の方は大丈夫? 昨夜も……眠れなかったみたいだけど」
僕はそう、彼女の方へと話題を変える事にした。
何だか今日の僕は、余計な事を口走ってしまいそうな気がして、恐かった。
……昨夜。
キッチンでは暫く物音がしていた。
夜中の3時頃だっただろうか。
気になる程の大きな音ではなかったけれど、最近の僕は、小さな音にでもすぐ反応して起きてしまう。
無意識に彼女の存在に気を取られて、睡眠に集中できないのかもしれない。
「あ……ごめんなさい。……うるさかった?」
「……いや。……頭痛?」
「……うん。でも、もう大丈夫」
そう言って彼女は笑うけれど、やっぱりその笑顔にはどこか、疲れが見える。
「無理してない?」
咄嗟に出た自分の言葉が意外に強く響いて、僕は自分でもびっくりした。
「……え?」
野中七海も、それに驚いている。