孤高の魚
「……パン、焼く?」
そう言う彼女の優しさを、首を横に振って断った。
………
何か……。
何かよくわからない気持ちが、僕を支配し始めているのがわかる。
それを、どう表したらいいのか分からない。
分からないけれど……
嫌な気持ちだ。
嫌だ、という事だけははっきりと分かる。
……多分、寝不足なのだろう。
ここ最近、大学の課題もあったし、さくらへの出勤も続いている。
大学から帰れば尚子が遊びに来ているし、夜中には眠れない野中七海が気になって仕方がない。
各々と微妙な距離を保ちながら、やっぱりどこかは疲れているに違いない。
野中七海がここに来てからというもの、偶然にか必然にか、僕の周りでは本当に沢山の出来事が起こっている。
……起こりすぎている。