孤高の魚
泣いてる?
僕が?
「……ち、ちがいますよ……はっ……ズッ……」
僕もつられて笑ってみる。
……ポタリ。
頬に、何か冷たい感覚が走った。
今まで気がつかなかったけれど、僕の目には大粒の涙が溜まっていたらしい。
涙が一粒、頬を伝ったのだ。
……なんだ。
情けない。
僕は泣いているみたいだ。
電話の相手が尚子じゃなくてよかった。
大の男がこれでは格好が悪い。
『なんだ、何かあったのか? しょうがねえな。ナナミちゃん誘おうかと思ったけど、今日はお前、俺に付き合えや。飯、食いに行くぞ』
そう言って工藤さんは、情けない僕を食事に誘ってくれた。