孤高の魚



「わかるだろう。俺の言ってる事」


工藤さんは運ばれてきた前菜に舌鼓を打ちながら、僕の顔を相変わらずの真剣な眼差しで覗き込む。

鮮やかな前菜が、店員によって僕の目の前にも並べられる。

僕は反射的に箸を取ってみたけれど、あまり食べる気にはなれなかった。


………


「あの子は、不思議な子だよ」


……不思議な子。

工藤さんのその言葉には、僕は素直に頷いた。


「……そうですね」


「だろ? 巻き込まれるだろ? 放っておけない。
ああゆう子に惚れすぎると、お前みたいに真面目な奴は、危ないんだよ」


……真面目?
僕が?


「……はは」


僕は笑って誤魔化しながら、食べたくもない前菜を口に運んでみる。

ドレッシングか何かの酸味が、よくきいている。


「お前、大袈裟だと思ってるだろ?
だけどな、しっかりしないと、お前も歩太みたいに、何もかも投げ出したくなっちまうぞ?」



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