孤高の魚
僕はいよいよ、言葉に詰まる。
それを誤魔化す様に、グラスに残っていたビールを、一気に喉に流し込んだ。
「お前は、ナナミちゃんが歩太の幻想に取りつかれていて、それが可哀想だ、不幸だ、と思い込んでるだろう? 違うか?
だけど違う。あの子が幻想に取りつかれている内は幸せだよ。
現に、歩太の姿を探すあの子は、いつも幸せそうだ」
………
僕は、あのブルーのノートを幸せそうに見つめる、野中七海の姿を思い出してみる。
歩太を語る時の……彼女の少女の様な微笑みも。
………
「そうだろう?」
「……はい」
僕は、そう素直に頷く。