孤高の魚
キッチンには案の定、煙草の臭いが漂っていた。
野中七海が椅子の上に器用に膝を立て、揃えた膝に顎を乗せて、細い煙草をくわえている。
彼女の細い指が、それを挟むと、
ツッ……ハーー……
ツッ……ハーー……
と、煙草は定期的に彼女の口元を離れ、白い煙を上げた。
相変わらず、彼女の視線はテーブルに漂ったまま……
けれどもそれは、さっきとは違う、もう少し柔らかい視線である様に感じられた。
ツッ……ハーー……
ツッ……ハーー……
一定のリズムを伴って、彼女のどこか儀式的な喫煙は、続けられる。
体の震えも治まり、ゆっくりと瞬きを始める彼女は、ちょっと疲れてぼんやりしている、いつもの野中七海である様に僕には思えた。