孤高の魚
『歩太は見つからない』
いつか、そう断言した工藤さんの言葉が、一瞬、僕の頭をかすめた。
『一緒に歩太を探してやれ』
『お前にできるたった一つの事だ』
そう言った、僕へと向けられた言葉も。
『否定するな、肯定してやれ』
怖じ気付いていた僕を叱る様な、そんな強い言葉も。
………
「もちろんだよ」
僕の……歩太のフリをした男の……そんな無責任な呟きに、コクリ、と彼女は大きく頷いた。
その表情は、今までの僕が見た彼女のどんな顔よりも柔らかく、全てを任せきってしまった様な安堵を見せる表情だった。
歩太ならば、彼女にこんな表情をさせる事ができるのか……