孤高の魚
約束
野中七海がそうしてじっと瞳を閉じている間に、僕は静かにキッチンを後にした。
彼女が落ち着きを取り戻したという安堵と、そこへ導くのがいつも歩太の存在であるという現実の狭間で、どうしようもないもどかしさが僕の胸中で渦巻いて……
ハアア……
部屋の扉を閉めるとすぐに、僕は大きな溜め息を吐いてしまった。
「ナナミちゃん、まだおかしいの?」
そんな僕の様子を見て、ベッドで横になっていた尚子が起き上がる。
「いや、今は落ち着いてるよ」
僕はそう言うと、ベッドを正面にしてテーブルを挟み、カーペットの上へ座り込んだ。
「……そっか。なら、いいんだけど」
尚子もまた、安心した様にごろりと横になる。