孤高の魚



「努力してみるよ」

と、僕はそれについては曖昧に答えた。


「努力してみる……僕だって、彼女を幸せにしたいんだ」


キザなセリフだった。
僕には確かに、こんなセリフは似合わないだろう。


………


それから僕達は静かに部屋を出た。


チラリとキッチンの方を覗くと、野中七海はイスの上で膝を抱えたまま、腕の中に顔を埋めている。

表情は見えないけれど、落ち着いている様子だ。


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