孤高の魚
「パパは、わたしをね、ミヤベのおばさんと、センセイに押し付けたの。
そうでなければセイジョウが保てないんだって……
パパがそう言ったの。
……ナナミは、パパのセイジョウを壊すって」
……セイジョウ。
正常?
彼女の発音は『ジョ』にアクセントがあって、何だか歪に聞こえた。
「それはナナミがセイジョウじゃないからで……
ナナミが悪い子だからで……」
……話が断片的だ。
よく把握できない。
彼女の唇が僅かに震え出している。
それを誤魔化す様に、煙草を一口、また一口と唇へと運ぶ。
………
……僕と、彼女の指の先。
二本の煙草から上がる煙は、暫く漂って、それから各々の白を空中で紛らわせて消えた。
こんな風に漂って、交わって、どちらがどちらかわからなくなるくらいに……
僕は煙草の先を見つめながら思う。
そんな風に彼女を、自分の中に取り込んでしまえればいいのに、と。
そうすれば煩わしい言葉なんか、いらないのだから。