孤高の魚
「歩太を探しに行くんだろう?
それなら、そんな悲しい事を思い出すのは、しばらくやめにしよう。
ゆっくり時間をかけて、少しずつ整理すればいいんだ。
……大丈夫だよ。
ここには、ミヤベのおばさんもセンセイもいない。
もう、今は、誰も君を止めたりはしないよ」
……一呼吸置く。
彼女の視線は、僕の言葉によって徐々に曖昧さを忘れていく様だった。
「約束するよ。
僕は、できるだけ君の力になる。
だから、そんなに悲しまなくても、大丈夫だよ」
……ああ。
そう強く言ってはみるけれど。
なんてキザなセリフなんだろう。
かつての僕には考えられない。
けれども、『力になる』……
そんな約束が果たせない理由なんか、今の僕にあるだろうか。