孤高の魚
アパートから大学までの道のりは比較的簡単で、大通りに出てしまえばすぐに校舎が見えるはずだ。
けれども、携帯を開くと14:52。
……迷ってはいないだろうか?
少し心配になり、携帯を閉じ顔を上げると、通りを挟んだ向こう側にちょうど野中七海の姿が見えた。
歩き方でわかる。
しゃんと伸びた背筋。
どこかあどけなさの残る、幼い腕の運び。
そう言えばこんな風に、彼女と待ち合わせをした事など、今までにあっただろうか。
野中七海とは毎日顔を合わせているのに、何だか僕の胸はザワザワと音を立てる。