孤高の魚



黒いチェストの引き出しは、乱雑に開けられたまま。
ベッドの上は、きちんと整理されているのに。

それから僕の視線は、部屋の中央に置いてあるガラステーブルに落ちる。
テーブルの上には、あのブルーのノート。
彼女が大切にしていた……歩太と彼女の居場所だ。
それが、表紙だけになって残されている。

ああ、そうか。
この紙の切れ端はきっと、あのノートに書かれていた物なのだ。


バラバラになってしまったノート。
これには、いったいどんな意味があるのだろう。
そうしてこれらには、一体どんな事が書かれているというのだ。

彼女と歩太の居場所。
いったいそこには、どんな……


僕の頭は冴え始める。
多分、寒さのせいではない。


強い興味に導かれて、僕は大きく足を踏み出し、一番近くに貼ってある紙の切れ端に触れようと手を伸ばした。


……その時。



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