孤高の魚



………


細い肩。
そこに下りる黒い髪。

滴がまた一つ、ポタリと垂れた。


「……行こう」


僕は、震える彼女に向かって大きく足を踏み出した。
一歩、それからまた一歩。

そうして半ば無理矢理に、彼女の手を取る。
その手は、ハッとするほどに冷たい。


「ほら、こんなに冷えてる」


そのまま僕は、強引に彼女の手を引いた。
視線を落としたまま、彼女は黙って僕に従う。


………


異様な壁の光景を背に、二人で部屋を出る。
キッチンに入ると途端に、暖かく、乾いた空気が僕達を包み込んだ。


「座ろう。
コーヒー、入れ直すよ」


震える彼女を座らせ、僕はまたヤカンを火にかける。



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