孤高の魚
………
少しの沈黙の後、呼吸を整えるようにしてから彼女が口を開いた。
「わたし達の……」
「……うん?」
僕はまるで何でもないような素振りで、彼女の次の言葉を促す。
けれども内心はどこか、不安でたまらなくもあった。
……覚悟はしている。
僕は、彼女については何でも覚悟はしているつもりなのだ。
それでもあの光景は、僕を不安にさせるのに充分だった。
「わたし達の罪はね、わたしが想像していたよりずっと、きっとアユを苦しめていたの」
野中七海の声は、ヒーターの乾いた風音の中でも充分に響いた。
僕は『罪』という言葉に、無意識に身構える。
「アユニ、わたし……今頃、それに気が付いたわ」