孤高の魚
過去
「件名:やっばい
今家を出ようとしたら、めっちゃ雪降ってるよ!
寒いから、そっちに行くのはまたにする!
ナナミちゃんによろしくね!
尚子」
携帯を開いてみると、尚子からのメールだった。
やはり、さっきの雨は、雪になってしまったらしい。
「雪になったみたいだ」
そんな僕の呟きに応える代わりに、
「何から、話そう」
独り言の様に彼女は言った。
「どこからでも、何からでも、君の話したい事を、話せばいい」
携帯をポケットにねじ込みながら、改めて僕は彼女に向き直る。
………
彼女はコーヒーを、また一口。
それから、ゆっくり口を開いて、
「前に、仙台で、アユは、愛する人と一緒に暮らしていたのよ」
ハッキリとした口調でそう言った。
「愛する人?」
僕は繰り返す。