孤高の魚
クリスマス



………


……


例えば。

時間の流れを瞬間という「点」を結ぶラインに準えるとして、男と女では、そのラインの扱い方がまるで違うのではないかと疑う。

女は、ラインをきちんとカットし、束ね、ラベルまで貼り付けながら収める。
男は、ラインに不器用に結び目などを作り、絡ませながら、無理矢理に押し込める。

僕の周りの女達が、たまたまそんな風に見えるだけなのだろうか。
野中七海にしたって、歩太と過ごした時間については、そんなに上手くは整理できていないのかもしれないけれど。


………


あの日。

僕が帰宅するとすでに、野中七海の姿はキッチンになかった。
別々の部屋で各々の時間を過ごし、夕方になって「さくら」へは一緒に出勤したけれど、彼女はすっかり元通りで、キッチンで僕に話した過去の事など、まるっきり忘れてしまっている様だった。

僕はと言えば相変わらず、数日経った今でも、無意味に何もかもを引きずっている。


そんな中でも、まるで僕を取り残していく様に、世間はクリスマス一色に染まり始めていた。



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