孤高の魚



明日のイヴと、25日は「さくら」でもクリスマスパーティーをやる。
僕と野中七海はもちろん出勤で、それからは大学が休みに入る分、28日まではしっかりと働くつもりだ。

そうして29日から、僕と野中七海は仙台へと向かう。
そのための資金だって、僕らにはもう少し必要だった。


………


「歩夢、ナナミちゃんにさ、クリスマスプレゼント、何か用意したの?」


「……あ」


唐突にそんな事を聞かれて、僕は焦った。

プレゼント?
そこへ向かう思考回路など、残念ながら僕にはいつも用意されていない。


「ダメだなあ。
そいや、あたしも歩夢にプレゼントなんか、一回ももらったことないや」


嫌味のない尚子の言種に、思わず僕も頷いてしまった。


……プレゼント。
どうにも、僕には苦手な分野だ。

ましてやあの日からの僕の複雑な心境を、プレゼントなどという形として誤魔化す事なんてできないだろう。



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