孤高の魚
夜の闇に支配されようとしている町並みを、尚子を先頭にして三人で歩いた。
僕は見守る様にして、二人の背中を追う。
いつの間にか三人で外を歩く時は、このポジションができ上がっていた。
大通りを出たら、タクシーを拾う。
今日は、あのオーガニックレストランを予約してある。
それから賑やかな街を少し歩いて、シャンパンやワイン、チーズやポテトチップスを買い揃える。
キッチンで、ささやかな二次会をするのだ。
クリスマスツリーはないけれど。
………
タクシーの中でもレストランでも、尚子は一人ではしゃいでいた。
はしゃいでいる尚子に柔らかい視線を送るだけの野中七海。
それをただ見守る僕。
奇妙な三人は、各々のペースでパーティーを楽しんでいた。
「クリスマスって、あんまりいい思い出ないのよね。
あたし、いっつも仕事だったし」
もう、夜の11時を回っていた。
帰り着いたアパートのキッチンで、ケーキの箱を開けながら尚子が言う。
「僕だってそうだ。
いつもバイトしてたよ」
僕はビールを5杯飲んでいて、少し酔い始めている。
「ナナミちゃんは?
いつもどんなクリスマスだったの?」