孤高の魚



野中七海は一匹の魚。
そうして、一咲さんは一輪の花。
各々の胸元で輝くネックレス。


……ああ。
歩太らしい、綺麗なプレゼントだ。

やっぱり、僕には真似できない。


「さすが歩太だね」


感心した僕の言葉に、


「そんな事ないわ。残酷よ」


意外にも、そう彼女は強く言い放った。


………


彼女が布巾を走らせる手を止めると、しん、とした空気だけがそこにあった。
僕は手に持っていた残り物のケーキの箱を、そっと冷蔵庫へと仕舞う。


「残酷?」


「そう、残酷」


振り向くと、彼女は笑顔だ。



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