孤高の魚



「一輪の花は、意思を持たずに、それだけで美しいのよ。
ただ咲いているだけ、たったそれだけで愛される。
……けれど、一匹の魚は違うわ。
意志を持って、群れから離れるの。
そうしてやっとキラキラと輝いて見えるのよ。
……なんだかまるで、本当に私たちみたいでしょう?」


そう言って、彼女はまた笑った。


言っている事はわからなくもないが、随分ひねくれた考え方だ。
いったい、それのどこが残酷だと言うのだろうか。


「一咲は、ただそこに居るだけで愛されたわ。
パパにも、アユにも。
……でもわたしは違う。
わたしは、パパに愛されるためにも、アユに愛されるためにも、強い意志が必要だった。
それから、それを実現するための行動力もよ」




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