孤高の魚



「……本当?
本当に、そう思う?」


布巾を握りしめたまま、彼女は僕を見た。


………


その視線を受けながら、まるで僕の身体が、むき出しになってしまう様な感覚に囚われる。


「わたし、これをもらった時、アユに何もかも見透かされたんだと思ったわ。
アユやパパに見つけてもらうために、わざと群れからはぐれるような狡さを、わたしが何度も……利用したんだって事」


「……利用?」


僕には、彼女の言っている事の意味が、よくわからなかった。

狡さを利用?
いったいどういう事だろう。



< 340 / 498 >

この作品をシェア

pagetop