孤高の魚



父親が、姉の一咲さんの方にだけプレゼントを?
妹である彼女を無視して?


「それから、パパはわたしに厳しい顔でこう言うの。
七海もお姉ちゃんみたいに、がんばりなさいって……」


幼い野中七海はギュウと口を結んで、悔しそうに俯いていたに違いない。
僕にはその姿がまるで見える様だった。


「……そっちの方がずっと残酷だ」


そんな言葉が、思わず僕の口をついて出る。


「そうかもしれないわね。
……でもそれは、わたしがいけなかったのよ。
わたしが、一咲のようにいられなかったから、わたしがダメな子だったから、パパが怒ったの」



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