孤高の魚
「それでわたしは、一咲とは全く違う人生を歩むことに決めていたの。
高校なんか、行かなくてもいい。
働いて、家を出て、一人前になったら、パパが認めてくれるかもしれない……そう思ってた」
野中七海は、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
僕もその後に続く。
………
世間はクリスマスだと言うのに、この部屋は静かすぎて、何だか気が滅入ってしまいそうだった。
雪が降り出しているのだろうか。
やたらと寒い。
彼女の話を聞いている時はいつもそうだ。
過去を語る彼女の言葉はまるで、冷気を含んでいる様だ。
「わたしはいつも、一咲のいる『群れ』から離れる事ばかりを考えていたわ。
……学校、家族、教養、道徳、常識。
……清く、正しいことは、いつも一咲のものだった」