孤高の魚
その日、僕は珍しく真夜中に目が覚めた。
………
何か、夢を見ていたような気がするけれど、どんな夢だったのか思い出せない。
ただ、何か嫌な感じだけが、胸の奥に蟠っている。
体が汗を含んでいて、じっとりと重く、何だか気持ちが悪い。
………
それを紛らわすように、僕は隣で眠っているはずの尚子の体を手探りで探した。
けれども、僕の手の平が触れるのは、ひんやりした感触を残す、乾いたシーツだけだった。
………
「…んーー……」
眠れなくて、煙草でも吸っているのだろうか?
体を起こし、暗闇に慣れた目を凝らして辺りを見回しても、尚子の姿は見えない。
「……んーー?」
テレビの上のデジタル時計の明かりは、「03:26」を示している。
………
トイレにでも行っているのだろうか?
暫く耳を済ましていても、水の流れるような音はしない。