孤高の魚



僕の体は硬直する。

ほとんど無意識に、男である僕の視線は彼女の服のラインをなぞり始めていた。
あの膨らみを、歩太は少女の無垢な正しさから引き剥がしたのだ。
それを思うと、僕の体は益々熱く、硬くなる。


………


「アユはいつも、完璧に見えたわ。

一咲の前ではいつも、旦那さまや、お腹の子の父親の顔になっていたし、そうして、わたしと二人きりの夜には、わたしだけの恋人の顔になっていたのよ。

……不思議ね。きっとわたしも、知らないうちに、ちゃんと妹の顔と恋人の顔を使い分けていたのね。

自分でも、気がついていなかったけれど」


『恋人』ではない『愛人』だ。

喉元まで出かかったそんな言葉を、僕はグッと飲み込んだ。
自分をこれ以上ただの『男』に陥れたくはなかった。



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