孤高の魚
僕はそれを聞きながら、足下から全身の力が抜けて行くのを感じていた。
脱力感で体が重い。
こんなにも強く、重力は僕の身体を捕らえていたのだと気付く。
そうして大きく呼吸を整えてから、彼女は目を開いた。
ここからでも、彼女の長い睫毛がよく見える。
逃げる様に、僕は彼女の美しい顔に見とれる事に専念していた。
「その光を追う内に、わたしの意識は途絶えてしまったわ。
……次にわたしが目覚めたのは、それから一週間も経ってからの事だった。
病院のベッドの上だったわ。
全身が軋む様に痛くて、頭は鉛の様に重かった。何があったのかもよくわからなかった。
……自分の身体がここにあるという事にさえ、気が付くのに時間がかかったくらいだったのよ」