孤高の魚
腕に、野中七海の温もりと重みを感じる。
首に、サラサラと乾いた彼女の髪がくすぐったい。
すぐ目の前にある、彼女の白い顔。
長い睫毛が濡れている。
形のいい唇は、赤みの少ないピンク色だ。
少し乾いて、カサカサしている。
まるで、罪など何も知らない無垢な少女の様だ。
けれどもこの身体には、裏切りに汚れた罪が染み付いている。
その胸の膨らみに、思わず息を飲んだ。
……何を考えているんだ、僕は。
彼女が汚れてなどいるものか。
彼女はただ、ほんの少し、寂しかっただけなのだ。
そこに付け入った男が、身勝手に弄んでしまっただけだ。
そんな気持ちを振り払う様に、足で彼女の部屋のドアを勢いよく開けると、一瞬、壁がザワザワと波を打った。
あの白い歩太の残骸が、彼女を包み込む様にして待っている。