孤高の魚
そっと彼女をベッドの上に寝かせると、廊下から差し込む僅かな光に、胸元の魚がキラリと瞬いた。
彼女の罪を知ってしまった今、その輝きは何だかひどく悲しく見える。
………
彼女の上に、丁寧に布団を被せ部屋を出る。
廊下を歩く足が重い。
何だかひどく疲れた。
キッチンに戻り、重い身体を椅子に預け煙草に火を点ける。
相変わらず、ゆらゆらと緩やかに揺れる煙の白。
まるで、何事も変わらず、何事も知らないかのように。
……クリスマス。
ああ、そうだ、今日はクリスマスイヴなのだ。
とんだクリスマスになってしまった。
いったい今日は、どんな一日になるのだろう。
あのまま、野中七海は爽やかな朝を迎えられるのだろうか。
眠りは、彼女を少しでも、罪の意識から救ってくれるのだろうか。
彼女に触れていた手の平が熱い。