孤高の魚
野中七海も、僕と同じ気配を感じていたのだろう。
急に立ち止まってみたり、ふいにお店を覗き込んでみたり。
彼女もまた、そこに歩太の姿を探しているに違いなかった。
僕達には、歩太をこの街で探す事を決めた時から、仙台という場所そのものが、歩太の存在の化身であるようにも感じられていたのかもしれない。
それは鮮やかな色を持たず、モノクロで素っ気ない。
けれども僕達には強すぎる刺激を伴って、確かに存在している。
………
「一度ホテルでチェックインしよう。
少し休んでから、また出かければいい」
僕の提案に彼女も賛成し、3時を回った所で、アーケードを少し離れた大通り沿いにあるホテルを目指した。