孤高の魚
その後すぐに、僕はしばらく浅い眠りに落ちたけれども、尚子は朝まで戻って来なかった。
僕が朝の光にふと目が覚め、布団の中でもぞもぞしている頃、尚子がようやく部屋に戻って来た。
僕が寝ているフリをしながら耳をそばだてていると、尚子は何もなかったように僕の布団に潜り込んでくる。
失っていた尚子の温もりを背中に感じながら、僕は何だかホッとしていた。
尚子はただ疲れて、あのまま眠ってしまったのかもしれなかった。
けれども、あんなに夜の嫌いな尚子が、一人で夜を過ごす事に僕なりの不安もあったのだ。
………
いや、もしかしたら。
僕が今まで知らなかっただけで、尚子はいつも必ず、僕との行為の後に、歩太の部屋に忍び込んでいたのかもしれない。
そう思いながら、僕はしばらく、尚子のために寝たフリを続ける事にした。