孤高の魚
「とってもいい天気ね」
けれども、そう言って空を仰ぐ野中七海の頬には、いつもの明るい赤みがない。
表情は笑っているように見えても、その下には大きな負の感情が沈んでいるのかもしれなかった。
コインロッカーに荷物を預け、僕達は並んでアーケードを歩く。
彼女はいつも以上にお喋りをしながら、妙にはしゃいでいた。
……無理をしているのかもしれない。
疲れて見える僕のために。
自分の痛みを、誤魔化すために。
………
デパートの喫茶店でコーヒーを飲み、お洒落な雑貨屋でマフラーや帽子を試着して笑い、アーケードを抜けた大通りの、お洒落なオープンカフェでランチをした。
それは、いつも東京で過ごす休日とそれほど変わらなかった。