孤高の魚
泣いているのだろう、と思った。
僕もまた、静かに野中七海の隣に身を倒し、そっと……まるで壊れ物でも扱うようにして、カバーにくるまれた彼女の身体に手を回した。
その感触は、とても繊細で危うかった。
温かく、湿っていて、すべすべしている。
僕は今まで赤ん坊を抱いたことはないけれど、きっとこんな感じなのだろうと思った。
剥き出しの生命。
その、どこまでも純粋な温もり。
布一枚で隔たれた僕らの距離は、とても近く、また同じくらい遠くも感じられた。
彼女の体温が僕の皮膚に伝わり、同時に僕の体温もまた、伝わっているはずだった。
「あっ、う……んぐ、えっ……」
カバーの隙間から、彼女の嗚咽が漏れ出してくる。
それは、身体が温まるにつれて徐々に大きくなっていくようだった。
震える声に合わせて彼女の背中が上下する。
僕はその華奢な背中に、ピタリと自分の身体を押し付けた。