孤高の魚



野中七海か?
それとも尚子か?


僕がキッチンに立つ人物の顔を凝視すればするほど、両腕にかかる負担が徐々に重みを増してくる。
まるで、赤ん坊の体重が、急激に増えていくようだ。
僕は咄嗟に腕に抱えているそれを見る。


………


けれどもそこには、さっきまで眠っていた赤ん坊の姿はなく、野中七海が裸で横たわっていた。
白い首と胸、それから黒い陰毛が露になっている。
閉じられた瞳にも、睫毛の深い黒いが縁取られていた。

僕の左腕は彼女の首を支え、右腕は膝の下に入っている。
僕は必死に彼女の身体を持ち上げようとする。
けれども彼女の肢体は、鉛のように重い。

僕は微かな呻き声を上げる。
グッと唾を飲み込む。


重い。
苦しい。
重い。


それらの言葉は縮む喉に塞がれて、声にはならない。



………



……








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