孤高の魚
鍵穴に鍵を差し込み、ヒヤリとするドアノブに手を掛ける。
ここを出る時は、まさか一人でこのドアを開ける事になるとは思わなかった。
少なくとも僕は、二人の未来を信じていたのだ。
その形がどうであれ。
……いったいどこで、歯車は狂ってしまったのだろう。
いや、もしかしたら。
最初からとっくに狂っていたのかもしれない。
僕は歪んだピースを、無理やりに回していただけなのかもしれない。
ただ、力任せに。
………
部屋は無言で僕を迎えた。
僕の中ではもはや、淡い期待すら消え失せていた。
彼女は行ってしまったのかもしれない。
歩太の所へ。
それ以外に、何が考えられるだろう。
荷物をキッチンのテーブルに放り投げ、反射的にヒーターのスイッチを入れた。
昼食の時間は過ぎていたけれど、何も口にする気になれなかった。
朝から何も食べていない。
それどころか、歯を磨く事すら忘れてしまっていた。