孤高の魚
「このフィルターが、ナナによって手に取られる事を祈りながら、これを書いている。
そうでなければ新しい同居人が、いつかこれを何事も無く捨ててしまうだろう。
前置きを省いて記そうと思う。
何しろこの紙は、残念ながら文字を書くためには作られていない。
かと言って、他にナナのためだけに文字を残す方法を思い付けなかった。
ナナ、僕は行くべき所へ行く事に決めた。
この決断は、もしかしたら君を絶望させる結果になってしまうかもしれない。
けれども、これは間違いなくナナが生きるための選択なのだ。
僕が君のためにできる、最大の事だ。
そう僕は信じている。
だから、ナナもそれを信じて欲しい。
そうしてナナは、生きて。
その為に、今、君には頼りになる同居人がいるはずだ。
彼の事は、信用していい。
僕が選んだ男だ。
ナナも、その内にそれが分かると思う。
彼はきっと、君の力になる。
ナナ、とにかく、元気で。
幸せを祈っている。
船越歩太」