孤高の魚
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数日が過ぎ、数週間が経ち……
けれども僕達の胸に空いた穴は、決して埋まる事はなかった。
工藤さんはよく僕を食事に誘ってくれ、ママも小百合さんも優しかった。
尚子も、大きくなりつつあるお腹を抱えて、毎日のように訪ねてくる。
みな、野中七海を失ってしまった僕を心配すると同時に、僕の隣にある空虚を眺め、少しずつ彼女の不在を受け入れつつあるようにも見えた。
「仕方がない」という言葉は、いつでもそんな僕達を労り、救ってくれた。
………
もうすぐ大学の講義が始まる。
そうなれば、多少の忙しさで少しは気も紛れるはずだった。
少なくとも、この部屋で過ごす時間は必然的に短くなる。
けれどもその前に、僕には何か、成すべき事があるような気がしていた。
それは漠然としていて目的がはっきりせず、靄の様に僕の中に蟠った。
彼女の居ない生活の……覚悟を決めなくてはならない。
僕には、彼女がここに戻ってくる可能性については、何故か考える事ができなかった。