孤高の魚
『彼はきっと君の力になる』
歩太だってそうだ。
僕がこのアパートに野中七海を受け入れるのを、ちゃんと知っていたに違いない。
『歩夢はいつも、気持ちがニュートラルな状態にある。
誰のことも君は、過大評価も過小評価もしないだろう?
いつも、ありのままを見極めようとしている。
だから僕は君と暮らしていけると思ったし。……いつも、僕は君だけは信頼していけると、信じてるんだ』
そう勝手に僕を過信しながら、煙のように消えて行った歩太。
あまりにも大きな、野中七海という存在を置いて。
………
二人はまるで申し合わせたように順番に僕の生活に入り込んで、徐々にそれを歪めて行った。
台風の目の様に、強く、巨大な力で……
吹き飛ばし、掻き込み、引き裂き、ねじ曲げ。
僕はこれから、その散らかってしまった自分の居場所の、後始末をしなくてはならない。
僕がここで……
生きて行くためには。