孤高の魚
「……尚子、何か、変わったよ」
そんな尚子を見ながら、思わず僕は呟く。
「え?」
「変わった。
すごくいい意味で」
「本当?
そう言う歩夢もね」
「僕?」
「そう。
なんか、頼もしくなった気がする。
雰囲気がね、違う」
「そうかな」
「うん。
きっと、ナナミちゃんのおかげだね」
………
確かに、歩太と野中七海はここを通り過ぎて行っただけなのかもしれない。
けれども二人は、余りに大きな爪痕を残した。
それは僕や尚子の心に変化をもたらし、強く、何か言い知れぬ力を与えてくれた様に思う。
けれどもそれを実感として受け止めるには、僕達にはまだまだ時間が必要だろう。
………
「なんか、今の歩夢なら、あたし、ちょっと好きになっちゃうかも」
「はは。
それは誉め言葉として、受け取っておくよ。
それより、尚子は元気な赤ちゃん産んでよ。
僕にできる事なら協力するし」
「父親になってくれるとか?」
「………」
「あはは、困ってる。
冗談だよ」
尚子が笑う。
どこか……
スッキリした笑顔で。