孤高の魚
勢いよく玄関のドアを開けると、外は快晴だった。
冬の霞んだブルーの空が広がっている。
僕が大きく息を吐くと、柔らかい白が空に紛れていく。
タン、タン、タンと、軽やかなリズムを刻んで階段を降りる。
………
ふと、ポストを見ると、沢山のチラシが突っ込まれていた。
そのカラフルで安っぽい紙の束を引っこ抜く。
その時……
ハラリ。
微かな音を立てて、淡いグリーンの四角形が、足下に落ちた。
チラシに紛れて、姿を隠していたのだ。
僕はゆっくりとそれを拾い上げる。
その、グリーンに……
僕の心臓が高鳴った。
……まさか。
いや、でも。
まさか。
宛名を見る。
「飯田歩夢様」
ドッ、ドッ、ドッ……
僕の鼓動が激しくなる。
この丁寧で華奢な文字に……
見覚えがあった。
差出人の名前は、ない。
………
「……ああ」
溜め息が、思わず声になる。
激しくなる動悸を抑えるように、胸に手を当て空を見上げる。
そこには……
透き通ってどこまでも抜ける、歩太によく似合うブルーがあった。
僕は呼吸を整え、震える指先でその封を開ける。
涙腺は、もうすでに弛んでいた。