孤高の魚
……
しまった、と思った。
最後まで丁寧に読み終えてしまってから、僕はテーブルに放った封筒をもう一度読み返してみる。
宛名は
「船越 歩太様」
僕
「飯田 歩夢様」
ではない。
差出人の名前は
……ない。
他人の手紙を読んでしまった。
この華奢な文字の持ち主を、僕は知らない。
僕は呆然としたまま、便箋に丁寧に綴られた文字をもう一度視線でなぞってみる。
小さいけれど、丁寧な丁寧な文字。
その一つ一つが、どこか愛情を示している。
僕は生まれてこの方、ラブレターなどという物はもらった事がないけれど、これはまさにソレ…のような気がする。