孤高の魚
僕はそれを社交辞令と受け取り、適当な二つ返事で交わしていたけれど、早く客が引けた店内で、歩太は僕を待たせて後片付けを始めてしまった。
「今日はラッキーでした。お客様も早く引けましたし……
歩夢さん、ワインはいけますか?
家に、いいワインがあるんです」
歩太はどこか嬉しそうに、細い体を翻しながら笑った。
僕もつられて笑いながら、何かよそよそしい雰囲気に緊張していた。
……
音楽は切れ、他のスタッフも先に帰ってしまい、店の中は明るい照明で照らされた。
さっきとは、全く違う「COM」の雰囲気。
その中で的確に動く歩太は、何だか別人のようにも見えた。
蛍光灯の明るい照明の中で、歩太は益々美しい輪郭を保っていた。