孤高の魚
「歩夢さん。僕の家、今、一部屋空いてるんですよ。
2LDKで、キッチンも広くて。
一部屋使ってない状態なんです。
歩夢さんさえよければ、僕の家へ来ませんか?
家賃も、安くて済みますよ」
「COM」の床にモップをかけながら、歩太は突然、そんな提案をしてきた。
僕は驚いて、歩太の顔を見る。
歩太は、僅かな笑みを口元に湛えている。
「もちろん、歩夢さんさえよければ……ですよ」
「……本当に?」
「はい」
「いいのかな。僕には、ありがたい話なんだけど」
願ってもない歩太の提案に、僕はすぐにその気になっていた。
素性を知らない僕との同居を、歩太がすんなりと提案できた理由は僕には分からない。
そうしてまた、その歩太の事をすっかり信用してしまっている自分の事も、僕には理解できなかった。