孤高の魚
あんなに飲み続けているにもかかわらず、歩太は決して酔わなかった。
僕もお酒はかなり強い方だけれど、さすがに少し、酔っている。
歩太には、かなわないと思った。
歩太もまだあの頃は、二十歳になったばかりだったけれど。
……
歩太は冷静に、きちんと視線を定めながら、僕にこのアパートに住むための条件を一つ一つ挙げていった。
「電気や水道を無駄にしない事」
「キッチンは綺麗に保つ事」
「専用の冷蔵庫を用意する事」
「食事中は煙草を吸わない事」
「お互いの部屋には無断で入らない事」
……
そういった一般常識的な事を加え、その中でも絶対条件は
「お互いを、決して干渉し合わない事」
だった。
幸い僕には、どれもが簡単に守れそうな条件だった。
「無関心」
それがその頃からの僕の周囲の定評だったし、大学の授業が始まってしまえば、必然的に忙しくもなり、歩太を一々干渉するヒマなどはないだろう。
僕はいつも自分の事だけで、だいたいが精一杯なのだ。