孤高の魚


「歩夢くん、看板、お願いね」


僕が着替えを終えて戻ると、小百合さんはすぐにいつもの仕事を言いつけてきた。


「あ、はい」



僕は店の外へ出て、すっかり日も落ちてきた路面へ、さくらの看板の灯りを灯す。
淡いピンク色の灯りが、「さくら」の文字を浮き上がらせる。


………


「あ、あの……飯田、歩夢さん、ですか?」


その時、突然背後から、僕はか細い声に呼び止められた。

しゃがみこんだまま振り向くと、そこには、今朝のあの美しい彼女の姿があった。

白いシフォンのブラウスと、黒いフリルのスカートが、風に揺れてはためいている。

そこから覗く、白くて、綺麗な脚。




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