孤高の魚
「あ……今朝の……」
「アユは、アユはどこですか?」
僕が言いかけた言葉を、彼女はキッパリとした口調で遮った。
僕をじっと見つめるその視線は、今朝とはまた違って、ひどく真剣で強い。
彼女を見上げたまま、思わず僕はそれに見とれてしまった。
「……アユ?」
そして、僕の惚けた声はおそらく、彼女にはほとんど届いていない。
「今、COMへ行ってきたの。
……そしたら、アユの行方がわからなくなってるって。
さくらで働いてる飯田歩夢って人と一緒に住んでたって。
COMも、辞めてしまってだいぶ経つって……
ああ、やっと。やっとアユに会えると思ったのに」
彼女はそう一気に言葉を吐き出すと、突然、大きな瞳に涙を滲ませた。
その涙はポロポロと大粒の滴になって、彼女の頬を濡らし始めてしまった。
通行人が、何事かとこっちを見ながら通り過ぎて行く。
これではまるで、僕が彼女を泣かせたみたいではないか?