孤高の魚



封を開けてしまった言い訳になるけれど、歩太がいなくなってからずっと、歩太宛てに手紙が来た事なんてなかった。


………


歩太がいなくなって、もう半年以上。


携帯電話の請求書も、どこかで解約したのかしばらく来ていないし。
歩太宛ての光熱費の請求書も、結局は僕が支払っている。

あとは時折、眼鏡屋のセールのハガキや、珈琲豆のチラシ、通販カタログなんかが届くだけだ。

この部屋に手紙を送るような心当たりのある人間は、僕の田舎の母くらいのものだ。
僕が間違えて開けてしまっても、仕方がない。



< 7 / 498 >

この作品をシェア

pagetop