孤高の魚
野中……七海……
彼女の柔らかい声がそう発音すると、今まで何度となく僕の頭の中で反芻してきたどの「野中七海」よりも、ピッタリときた。
やっぱり……と、僕は心の中で呟いた。
やっぱり彼女は、あの手紙の差出人の野中七海なのだ。
………
「……そう、七海ちゃんね。おいくつ? お住まいはどちら?」
そんなママの質問に、野中七海を名乗った彼女は一瞬、僕の顔をチラリ、と見た。
僕がそれを不思議に思うとすぐに、
「年齢は、今年ハタチです。……今日から兄が前に住んでいた所に、そちらの、歩夢さんの所に、お世話になろうと思っています」
彼女はハッキリとそう言ったのだ。